1年に一度、8月頃に開催されるベグレリの世界大会「SlingSlam」。 出場することを楽しんだり、他のプレイヤーとの交流の機会になったり、自分のモチベーションになったりと、今のベグレリシーンにはなくてはならないイベントである。
現在のSlingSlamでは、多くのプレイヤーは競技で勝つことだけを目的としているわけではないように思う。 実際私自身も(もちろん毎年全力で良い動画を出せるよう頑張っているが)、大会優勝を目的として出場している、という訳では全く無く、他のプレイヤーとの交流を楽しみ、インスピレーションを得る機会として楽しんでいる。
しかし、SlingSlamも競技であり、世界大会である。ここでは、仮にSlingSlam優勝を目指すとしたら、どのような戦い方が良いのかについて考察する。
SlingSlamの戦い方
SlingSlamは毎年同じようなルールで開催されている。 本大会の採点について、公式ルールを見ると、次のことが分かる。
- 審査項目は①Clip Quality、②Technical Difficulty、③Artistic Meritの3つ。
- これら3つのウエイトは同じ。
すなわち、競技としてSlingSlamに出場する上では、①②③で他者より高く評価されることが必要になる。
ここからは、各審査項目について詳しく考えてみる。
Clip Quality
この項目では、動画の品質を評価する。ベグレリがはっきり見えるよう十分な照明があるか、背景がきれいか、フレーミングが適切か(フレームアウトしていないか)などが評価される。
この項目はベグレリの技術とは全く関係なく評価されると思われる。しかもそれが他の項目と同様のウエイトである。例えば全体を100点満点とすると、約33点分は、動画の品質を上げることで改善可能であるということである。効率よく評価を得るためには、この項目でいかに評価を得られるかが重要になってくるだろう。
Technical Difficulty
この項目では、ベグレリの技術的な難しさを評価する。技の洗練度や複雑さ・難しさの他、技のバラエティーや革新性が評価される。
ここで言及したいのは、審査項目の中に「variety of trick elements」すなわち技のバラエティーが含まれている点である。技の洗練度や難しさなどは、ベグレリプレイヤーは皆日々練習して向上に努めていることだろう(すなわち技の洗練度や難しさの評価を得るための近道はなく地道に練習するしかないということ)。
しかし、練習していると自分の得意な技と苦手な技が出てくると思う。大会となると自分の得意な技だけを詰め込んだ構成になりがちだが、SlingSlamで高評価を目指すなら多少苦手でも多くの要素を詰め込み、技のバラエティーを豊かにするべきだろう。
Artistic Merit
この項目では、動画の芸術性・美しさを評価する。具体的には(日本語への訳が難しかったので原文のまま掲載すると)
①performance and style、②good flow, tight/ clean execution、③clean editing、④matching with music etc.、⑤additional elements (humour, finishing moves, combo construction etc.)
以上5つで評価される。 ここで言及したいのは「②tight/ clean execution」が評価される点である。難易度の高いエアリアルを取り入れるとどうしても形が崩れたり手が大きく動いたりすることがある。ただ、これは「tight/ clean execution」の評価を大きく下げることになろう。そのため、Technical Difficultyを高く保ちつつも、タイトでクリーンな技を行う必要がある。また、技の構成を考えるときにも、単に難しい技を取り入れるのではなく、難易度が高く、かつ美しくタイトにできる技を取り入れるべきであろう。やみくもにエアリアルを取り入れるよりも、形の崩れにくい指間移動系のトリックを取り入れるなどした方が、効率よく評価を得られると考えられる。
全体として
注目すべきは、以上3つ(Clip Quality、Technical Difficulty、Artistic Merit)の評価基準が、それぞれ同じウエイトであることである。
上述の通り、全体を100点満点としたら、それぞれ約33点分のウエイトがあるということだ。SlingSlamでできるだけ高い評価を得ようと思ったら、まずはベグレリの技術が全く関係ないClip Qualityを高めることが得策であろう。今までのSlingSlamで高く評価されている動画を見ると、背景が黒一色で、紐やビーズ・手との色彩のコントラストを保っているものが多い。これまでの傾向を踏まえると、黒一色の背景で撮影すると良いと思われる。
一方、Technical Difficultyの項目も全体の1/3のウエイトを占めており、Artistic Meritの項目も「①performance and style、②good flow, tight/ clean execution」はベグレリの技術に関係することである。すなわち、(当然であるが)ベグレリの技術の高さも全体の評価に大きく関わる。(単純計算だが、1/3+1/3×1/5=2/5、すなわちベグレリの技術に関する評価が全体の2/5程度を占める)1
おわりに(個人的意見)
ここまで長々と考察してみたが、個人的には自分がやりたい技をやりたいようにやるのが良いのではないかと思う。他の成熟したスキルトイは、トッププレイヤーのスタイルが似通ってきて、目指すべき明確なロールモデルが存在しているが、ベグレリはまだその域には達していない。まだプレイヤーごとにスタイルが全く異なる状態だと思う。無理に今の大会ルールに縛られて画一的なプレイをするより、自分のやりたいこと(=スタイル)を貫くほうが、今後のプレイヤーのためにもなる(し、楽しい)。
また、SlingSlamはとても良く出来たルールのもと開催されていると思うが、個人的には、技術に関する評価の割合が少ないのではないかと感じる。上述の通り、純粋なベグレリの技術に対する評価は、全体の2/5くらいなのではないかと考察した。これがもし正しいのだとしたら、ベグレリが”スキル”トイである以上、技術に対する評価の比率を上げるべきだと思う。ただし、これはあくまで(ジャグリングやけん玉などの経験を踏まえてベグレリを始めた)私個人の意見である。極端な話、「すっごく上手いけど動画の品質が悪い人」と「下手だけど動画だけものすごくキレイな人」どちらを勝たせるべきかということであり、これは今後のベグレリコミュニティーの評価によって決まっていくであろう。
そして、ここまで長々と書いてきたが、私は今年のSlingSlam2024は、順位・評価をガン無視して、自分のやりたい技・見せたい技だけを詰め込んだ構成にする予定である。
毎年毎年、構成を考えるたびにでSlingSlamの評価について考えているので、ここできちんと(?)まとめてみたってわけ。来年以降もルールが変わらなければ、今回の考察を参考にするなりしないなりして構成を考えたい。
計算についての補足:1/3(Technical Difficulty分)+1/3×1/5(Artistic Meritの5つの項目のうち①②の2つ分)=2/5 ↩︎