ベグレリの動画を撮影するにあたって、どのように撮影したら美しい映像になるのかということは、永遠の課題である。 ということで、本記事では、ベグレリ動画の撮影に焦点を当てて考えていきたい。
ベグレリ動画のお手本
「良い」ベグレリ動画について語るうえで、ロールモデルを設定しておかなければならない。ベグレリの動画として最も有名なものは、おそらくKUMA Filmsの「Begleri-2Beads 1String」であろう。スキルトイの世界では有名なKUMA Filmsだけあって、美しい映像が収められている。
しかし、この動画のメイキング映像を見てみてほしい。高価・高性能なカメラやジンバルなどの機材を使用して撮影されていることが分かる。正直「そんなん、素人には無理じゃん!」状態である。また、KUMA Filmsでは専門のカメラマンが撮影しているが、個人が技動画を撮影するのに毎回カメラマンを呼ぶわけにもいかない。
この動画は、美しいスキルトイ映像としては素晴らしいが、一般のプレイヤーが真似しようとするものではないように思われる。
「お手本」のベグレリ動画の条件として、
- 一人で撮影可能であること
- 機材が(素人の常識の範囲内で)購入可能であること
- 技がきちんと見えること
が考えられる。
ここでは、ベグレリの映像コンテストであるSlingSlamの入賞動画をロールモデルとして設定したい。何故なら、SlingSlamは採点項目に「Clip Quality」というものがあり、本大会で評価を得ている動画はある程度の品質が担保されていると考えるためである。また技術を審査する大会で評価を得ているということは、技がきちんと見られるように撮影されていると考えることができる。本記事では、ベグレリの技を撮影する動画の「お手本」として、SlingSlamの入賞動画を見ていく。
なお、SlingSlamの過去入賞動画はこちらにてまとめている。以降はこれを参考にして考察していく。
動画撮影に関する論点
動画を撮影するにあたって、悩むポイントは以下の通り。
- 画角は上からか、横からか
- 背景の色・紐の色は何色か
- 撮影機材は何を使うか
これらについて、SlingSlamの過去入賞動画を参考に考えてみる。
① 画角は上からか、横からか
上からの画角は、技全体が見やすいが、bead rollなどが指に隠れて見づらくなるという問題や、どの指でグリップしているのかが見づらくなるという問題がある。逆に、横からの画角は、bead rollなどは見やすいが、手の甲側での動きが隠れて見えないという問題がある。
SlingSlamについて見てみると、2023年、2022年は3位までの入賞動画はすべて上からの画角で撮影されていた。各個人について見ても、例えば2021年以前は横からの画角を採用していた@keitxro氏も、2022年以降は上からの画角を採用している。 ここ最近は上からの画角がスタンダードになってきているということだろう。
実際すべての技を見えるようにしようと思うと、上からの画角になるのだろう。プレイヤーが見ている視点に近いというのもあるため、難易度が見ている人に伝わりやすいというのもメリットの一つだろう。
② 背景の色・紐の色は何色か
技をきちんと見えるようにするためには、手・背景・ベグレリはそれぞれ異なる色でコントラストを大きくするのが良いと考えられる。
では、SlingSlamではどうなっているか見てみる。
すべての動画を一見して思うのは、黒い背景が多いということ。2023年はすべての入賞動画が黒背景であった。
そして、黒背景の動画では、紐は白が使用されることが多い。2023年はすべて黒背景・白紐という組み合わせであった。他の年について見ると、黒背景に黄色・赤・ピンクの紐という組み合わせもあるが、これらの紐も明るめの色である。背景を黒く潰して、明るめの色の紐を使うのが、技が見やすくて良いということだろう。なお、それらの動画は手が白飛びしないよう上手く撮影することで、紐と手のコントラストを保ち、グリップの可視性を保っていた。
黒背景以外を採用している動画を見ると、白っぽい床に黒っぽい紐を採用しているものや、茶色の背景に青い紐を採用しているものがあり、これらも背景と紐のコントラストを保つよう配慮してあるように思った。また、絞りを開放したカメラで撮影したと思われる動画もあり、背景をぼかし手元だけにピントを合わせることで、背景と紐のコントラストはそれほど大きくないものの紐の可視性を保っている動画も存在した。
まとめると、
- 一番多いのは「黒背景・明るい色の紐」の組み合わせ
- 背景と紐のコントラストを保てばどんな色でも良いのかもしれない
- 手は白飛びしないようにして紐とのコントラストを保つ
- 絞り開放で背景をぼかすことによってベグレリの視認性を高める撮影方法もある
ということである。
③ 撮影機材は何を使用するか
自分の場合は、GoPro(HERO8)を使用している。これを使用してSlingSlamでもSingleGripOpenでも入賞することが出来ているため、GoProくらいの画質やフレームレートがあれば動画撮影には十分であると言えると思う。
ただ、SlingSlam入賞動画を見ると、@keitxro氏と@zmtblv氏の動画の美しさが際立っている。 おそらく(素人目には)ミラーレス一眼などの機材を用いて撮影したのではないかと推測される。 @keitxro氏は、別の動画のコメント欄で使用カメラとレンズを聞かれ、「sony α6000」「16-50 kits lens」と答えていた(調べたところによると、レンズは「16-50mm F3.5-5.6 OSS」)。おそらく、SlingSlamの動画の撮影もこれを使っているのではないかと勝手に思っている。べらぼうに高いカメラ&レンズを使用しているわけではないため、高品質の動画を撮影したい人はミラーレス一眼を購入するのが良いのだろう。(実際私も何度かミラーレス一眼で撮影をしたことがあるが、やはり動画はきれいである)1
また、前項の背景の話とも絡むが、ミラーレス一眼などで絞りを開放することにより、背景がきれいにボケて手元が見やすい動画が撮影できる。背景がガチャガチャした場所で撮影する場合にはミラーレスなどでF値の低いレンズでの撮影が良いのだろう。
撮影方法について、私はカメラを頭に固定して撮影しているが、ミラーレス一眼などの場合はおそらく三脚などで固定して撮影しているのだと思われる。ただ、上からの撮影となると、どのような三脚を使って、どのような格好で撮影しているのかは全く見当がつかない。真上ではなく斜め上から撮影し、横から手を出すようにしているのだろうか…?
また、ライティング(照明)について考えてみる。@keitxro氏のこちらの動画は、背景をよく見ると鏡になっており、何となく撮影風景が分かるようになっている。カメラらしきものの下側に非常に強い光を放っている物体が見える。これが何なのかはよく分からないが、何らかのモノを用いて手元を明るく照らすようにしていると思われる。なお、私の動画についても、デスクライトを手に直接当てるよう向きを調整することで照明代わりにしている。
なお、何となく素人目には@keitxro氏と@zmtblv氏はミラーレス一眼を使用しているのかなという見当がつくが、他の方はどのような機材を使用しているのか見当がつかなかった。ただ、それほど画質が良いというわけではない動画もあったため、画質自体はそれほど評価に大きく影響しないのではないかと思う。
まとめると、撮影機材については
- きれいに撮影するならミラーレス一眼。ただし、それほど画質にこだわらなくても評価は得られるし技はきちんと認識できる
- きれいな映像は、照明が重要そう
- 三脚などどのようにカメラを固定しているのかは分からない…
まとめに代えて
ベグレリの動画を撮影するにあたり、以上のポイントを押さえれば、技が見やすい動画が撮影できるであろう。ベグレリの動画撮影についてはこれまでどこを探してもノウハウが書かれていなかったため、各プレイヤーがそれぞれ試行錯誤して撮影方法を(各々)確立しているのだろうと思われる。動画の美しさが大会に評価に影響するため、動画の撮影方法をあまりオープンにしたくないという考えがあるのも(とてもよく)分かるが、一人のプレイヤー・一人のベグレリ好きとしては、トッププレイヤーの真似をしてみたい。いつか撮影方法について聞いてみたいなぁと思っている…
特に、カメラを三脚などに固定して撮影する場合、どこに固定して、どのような体勢で撮影するのがよいのかがとても気になる。あまりに地面(すなわち黒い背景)と手が近すぎると、照明が背景に直で当たってしまったり、ベグレリが床に衝突してしまったりしそう。一方立った状態だと、三脚が邪魔で思うようにスリングが出来ないように思う。どうなっているんだろう…
お手軽に技の見やすい動画を撮影するなら、GoProなどアクションカメラによるPOV(Point of View、目線映像)はおすすめです。
参考までに、こちらがミラーレス一眼で撮影した私の動画。撮影後圧縮したりしているため、ファイルサイズは8MB程度と小さいが、それでもスマホで撮影した映像とは明らかに違う細部の美しさがあると思う。
↩︎